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某コンサルの定期セミナーに行ってきました。

会場は東北の有名旅館さんで、震災があっても乗り越えてビクともしない経営をしておられます。

この社長さんの講演を聞きたいがため参加しました。

以前この旅館さんが15年くらい前に小さな宿をオープンさせたとき、小規模セミナーに出席させて頂きまして、 その際に講演された社長さんの鋭い視点と論理的な経営手法に魅せられました。

訥々とした語り口から、旅館の設備投資の基本的考え方を教わりました。

また、旅館の販売手法についても、チャネルの栄枯盛衰を論理的に説明された時には、その明晰さに驚かされました。マーケティングにプロダクト・ライフサイクル理論というのがありまして、当時の小生は恥ずかしながら知りませんでした。それを社長は滔々と述べられ、官僚化組織論(組織は硬直した官僚化から腐敗する)と合わせながら、当時業界のシェア断トツで絶頂期にあった某旅行会社の衰退を、さも歴史の必然のように説明されました。

なんとなく感覚では古い体質のその旅行会社さんは衰退するであろうと感じてはいましたが、この社長がそう確信しているなら間違いないだろうと、小生もその旅行会社に頼らず自力で集客するという、それまで信じていた道を再確認することができました。

以上のように、当時の講演に感銘を受けていたので、今回も社長さんが今回は震災をどう乗り越えて、どういう4P政策をとっているのか興味津々で東北へ向かいました。
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館内を見させてもらって、30年前の莫大な費用を掛けた設備投資に唖然とします。
1万坪の敷地に60億の費用を掛けたその建物は、バブル経済当時でも贅の極みであったでしょう。

当時の状態のもの、リニューアルされたものと意識しながら、商品整備の変遷をゆっくりと見学しました。

まず驚かされるのは設計の優秀さです。

30年前の設計部分も全く古さを感じさせず、どちからというと美的斬新さも感じます。
当時から遜色のない意匠は見事としか言いようがなく、驚嘆の一言です。

さらに驚いたのは、優れた意匠に加えて、使い勝手つまり機能性が優れています。

お客様目線での素晴らしさではなく、運営者の使い勝手も十分に計算されている設計です。

意匠と機能の両立は、この設計事務所の面目躍如たるものがあります。
これができるのは全国でも限られた設計事務所ではないでしょうか。

設計思想が見事なのですね。

さらにその上に、コンサルが予算管理をしっかりするから、比較的建設コストが低く抑えられる。
まさに意匠・使い勝手・費用三拍子そろったハードであるといえます。

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到着してから食事処、部屋など館内見て回りました。
さすがにどれも素晴らしく、勉強になりました。

設計思想の素晴らしさは文句のつけようのない素晴らしさなのですが、
目線の違いによって、及第点を大きく上回るものと下回るものの差が大きすぎて違和感を感じます。

たとえば、

お部屋に入って長旅の疲れを顔を洗って取ろうと洗面所に行く。
何かが違う。

疲れた体をソファに預け、スマフォを取り出す。
あれっ?となる。

イチイチ感じる違和感、これはなんだろう?とずっと考えていたら、答えは社長自らの講演にありました。
それは後程。

会場視察を終わり、いよいよ社長の講演です。
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15年振りの講演で、かくしゃくたるお姿は昔さながら。
昔ほど鋭さがなくなり柔和な雰囲気に包まれています。

どれほど研鑽されてきたのか想像できませんが、この社長の話す言葉はすべて説得力があります。
話す言葉ひとつひとつが日々の多大な責任を負う決断の連続を続けてきたという自信と確信がおのずから出るのですね。

自分も社長になってみて、会社の行方を左右するのは日々の研鑽とそこから導き出される決断だということを痛感しています。

話された会社の業況などのすばらしさには思わず感嘆の声をあげそうになります。
自己資本比率を上げながら商品整備を行うのはたやすいことではありません。
設備投資を行えば自己資本比率は下がるためためです。

よく見かける大規模施設は自己資本比率向上に執着するあまり、商品整備がちぐはぐになっています。設備投資余力があるのに最小限でしか商品整備を行っていない、もしくは設備投資余力がないから商品に投資しないのかもしれません。経営者としてそこの判断は大きく分かれるところだと思います。

こちらの旅館はそういうことはなく、商品もしっかり整えていました。
商品を良くするから集客が増えて経営も安定するというスタイルをキチンととっておられました。
大規模旅館でこれができるのは並大抵でない努力だと思います。

財務面ではやはり素晴らしい見識をお持ちです。
旅館業は「不動産業」と「飲食業」の合体形態というのは至極ご尤もで目から鱗が落ちる視点でした。

また、震災の後の経営の仕方も素晴らしい。
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震災直後から出勤可能な役員だけで会社を運営し、
電力会社さんなどの宿舎としての存在意義を高めておられました。

その時の誰でもどんな仕事でもする、という状態から、その後マルチジョブ化やシフトのたすき掛け廃止などに取り組まれたそうです。
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販売の姿勢も納得ができる方法でした。
顧客囲い込み戦術で会員制会報誌による直販売をチャネルの核に据えておられます。
何万もの会員情報を保有し、特別割引プランをDMで送付して集客する。
エージェントには頼らないという戦術ですね。
旅館を4つも同じ商圏に保有されているので、それぞれの特徴を活かして差別化した販売料金で売ることができる、こちらの会社特有のスタイルだと思いました。
通常よりも安く、自分の旅館を気に入ってくれる方だけにリピート訪問してもらう、という販売手法です。

ここまでは至極ごもっともで、納得できます。

ところが、そのあとに耳を疑う言葉をされました。

OTAなどのクチコミについて、

お客様は好き勝手なことを言うだけなのです。
自分の気に入ったこと気にくわなかったことしか書きません。
『この会社に良くなって欲しい』と思ってクチコミを書くわけではないのです


という内容のことを言われました。

だからネット経由の集客には特に力を入れていはいないとのことでした。

生意気ですが、ここから先は私個人の見解です。
確かに顧客囲い込み戦術は一昔前はそれもありかな、とは思っていまた。

会員になるということは自社を気に入ってくれたということですから、新規顧客を開拓するための広告宣伝などの営業経費もかかりません。単に料理プランを料金を提示するだけで購買意欲が生まれます。

AIDMA理論でいうところのAttention,Interest,Desire,Memoryをすっ飛ばして、Actionだけ顧客に促すだけですからね。合理的ではあります。このActionの無限リピートだけで済むので販売経費が大幅に縮減できます。

ところが、囲い込みは自社の殻に閉じることに繋がります。

「自分を好きな人だけウチに泊まってください。文句言う人は来なくていいです」ということにはならないでしょうか?

確かにクチコミによって自分勝手・好き勝手なことがに書かれることは事実です。
ですが、厳しい意見にこそ真実が籠っているのではないでしょうか。
クレームにこそ、改善のヒントが隠されています。

手厳しいクチコミに正面から取り組むことで、同じようなクレームはなくなる。
そうすると徐々にではありますが、あらゆるお客様に喜んでもらえる状態になる。

これこそ「顧客目線」による改善です。

こちらの会社は改善ポストを設けて、経費削減や合理化になる意見をスタッフに広く徴収されています。
聞く耳を持っておられるのはすごく素晴らしいことです。

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ところが、お客様の声は心から聞こうとされていない。
会社のことは社長ご自身が一番よく分かっておられるということなのでしょうか。

改善カードをスタッフに書いてもらう以上の素晴らしいことを、お客様はクチコミに書いてくれているのに、と思います。

大先輩に対してとても生意気なことを書いてしまいました。
言葉が過ぎました。

とどのつまり、マーケティング1.0なのか2.0なのか、ということだと思います。

こちらの経営は3.0や今はやりの4.0にも積極的に取り組んでおられるのに、2.0ではない。
そう感じました。

先ほどロビーや部屋で感じたことは、

たとえば、お部屋に入ってみて、サイズの合わない浴衣しかなく困りました。
しかしエレベーターを降りると、廊下に浴衣が山積みされているのがありました。
勝手に取ってくれということなのでしょうか、あまりにもこれでは。

顔を洗おうと洗面所に行くと、歯ブラシ・シャンプー類などの備品類のあまりの粗末さにびっくり。一応最高グレードの部屋の一人利用にしたのにこれはなかろう。 

大浴場に行くにも、巾着がなくて洋服屋さんで服を包んでくれるような安っぽいビニール袋・・・。
ドライヤーも小さな小さなもの。

ソファーに座ってメールでもチェックしようかと思いきや、Wi-Fiが繋がらない。
前回夏の研修会の旅館さんもそうでした、お客様が今一番欲しい無線Wi-Fiに設備投資していない。

お客様アンケートを読んでいれば、Wi-Fiがないことは絶対に書かれているでしょう。 そしていかに不便であるかも。

宿泊単価を上げたいための部屋や風呂などのリニューアルはコンサルのアドバイスによってしてはいても、 アンケートに毎日書いてあるだろうWi-Fiについてはしない、というのはありえない決断だと思いました。

とどのつまり、感じた違和感は、会員囲い込み戦術によって毎日泊まっている新規のお客様の本当の声を聞かない経営になっているのではないかということです。

しかし、管理経営においては私など及びもつかない大変素晴らしい経営手法をとっておられ、心から尊敬しております。いかにして経費を削減するか、如何にモチベーションを与えながらスタッフを教育するか、というアドミニストレーションはずば抜けています。私もできるだけ吸収しようと、目を皿のようにして聞いていました。とても参考になる素晴らしい講演でした。

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その後は懇親会。

松島の海の幸をはじめ、素晴らしい品の数々。
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料理は文句なしに絶品でした。

和の料理でありながら、フレンチへのオマージュというか、融合の仕方が素晴らしいですね。

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知り合いが飛び切り美味しい、アルザスのビオワインを持ってきてくれました。
こりゃ、松島の牡蠣に合わせたら最高。
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 よさこいチームがあるそうで、若いスタッフのみんなの元気な演技。

 松島の夜を堪能しました。
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これがこの宿の一番の自慢、庭園越しに見る松島の朝日です。

確かに綺麗でした。

帰りは皆生からもう一人参加した友人と一緒に東京駅まで。
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話のノリで、今まで乗ったことの無いグランクラスに乗ってみることになりました。
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 乗り口で乗務員さんが出迎えてくれます。
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 飛行機の上級シートと同じように、軽食やおつまみドリンクが全てフリーです。

シートは写真に撮れなかったのですが、フルフラット近くになる快適な乗り心地でした。
あまりにも座り心地がよくて、あっという間に眠りについてしまいました。

たまにはこういった贅沢もいいもんですね。

以上、東北研修の備忘録です。

っていうか、最近ブログの存在を忘れてしまっていました。
時々はちゃんと更新しないといけませんね。